約 2,307,570 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1077.html
{姉貴の会社に行ってみるか} 「う~ん、やっぱ姉貴の会社に行ってみるべきかなー」 「何でですか?」 リビングに俺とアンジェラスがテーブルに座りながらウーロン茶を飲んでた。 今日は日曜日、晴れの午前10時。 「いやなぁー。実際、俺は武装神姫の事を色々調べてみたんだけど、どれもこれも古い情報しか入ってこなくてなぁ。色々と困ってる訳よ」 「そうなんですかー」 「そうなんだよ。…よし、日曜日で暇だし行ってみっかぁ」 「えっホントですか!?」 アンジェラスは驚きその後、嫌な顔になった。 まるで俺の姉貴の会社に行きたくないうような表情だ。 「うん?どうした、嫌なのか??」 「…はい。あんまりあの会社にはいい思い出が無くて…」 「思い出…ねぇ~」 俺は立ち上がり煙草を口にくわえ、火を点け換気扇のスイッチを入れる。 自分が生まれた場所を嫌うアンジェラス。 何か理由があるのか。 「なぁ、行きたくない理由は…あっ!?」 また煙草を盗られてしまった。 ホント、アンジェラスと居る時は煙草が吸えないのは辛い。 ほんでもって煙草は灰皿にダイブしグチャグチャに消される。 酷い形になり二度とその煙草を吸えなくするのがアンジェラスのやり方だ。 えげつないぜ。 つーかぁ金がもったいないから、いい加減やめてほしい。 「ご主人様、何度も言いますけど煙草は体に毒です。やめてください」 「こっちからも言わせてもらう。俺は好きで煙草を吸ってるんだ。テメェこそ煙草を奪うのをやめろ」 「やめません!」 「やめろ!」 「やめません!」 「やめろ!」 「絶対!やめませんー!!」 真剣に怒った顔で俺を見るアンジェラス。 まったくなんなんだ。 オーナーの命令に背く神姫なんて聞いた事がないぞ。 …前々から思っていたが、アンジェラスは少し特別な神姫なのだろうか。 俺が教えた料理や掃除は最初は駄目駄目だったが、今は普通に出来る程度まで上達している。 パルカもそこそこ上達してるがアンジェラス程のレベルじゃない。 上達の早さが尋常じゃない早さなのだ。 ネットの掲示板で他の武装神姫のオーナーと連絡してみると『それは凄い』だの『ありえねぇー』だの『嘘だろ?』とかの驚きの答えしか返ってこなかった。 これは調べる必要性がありそうだな。 換気扇を止め、右手でヒョイ、とアンジェラスを掴む。 「ご、ご主人様、いったい何を」 「姉貴の会社に行くぞ」 「!?本気で言ってるんですか!」 「あぁ~、本気と書いてマジだ」 「嫌ー!離してー!!」 俺の右手の中で暴れるアンジェラス。 だが、こちとら喧嘩で鍛えられた身体なんでね。 神姫の力じゃあどうって事ないだよ。 けど、少し罪悪感を感じる。 俺に抵抗してまで行きたくない理由も気になるが…。 二階に上がり、机に居るクリナーレ、ルーナ、パルカを呼ぶ。 「お前等、今から姉貴の会社に行くぞ」 「「「えー!」」」 クリナーレ、ルーナ、パルカが同時に声を上げる。 もしかして、こいつ等も姉貴の会社が嫌いなのか? 「一ヶ月ぶりの里帰りだね」 「そうですね。一応、メンテナンスもしてもらいましょう」 「ですね。お兄ちゃんのメンテナンスもいいですけど…あの時のお兄ちゃんの目、ケダモノっぽくて…」 お、こいつら嫌がらないなぁ。 アンジェラスとは全然違う反応を示す。 ていうかパルカ、いつメンテナンス中に俺がケダモノの目をしたんだ? 確かにお前の巨乳につい目がいっちゃただけじゃん。 たかがそのぐらいでケダモノ扱いは酷すぎるじゃないのか? まぁいいや。 「お前等は肩に乗れ」 左手を机に置きクリナーレ達が上ってくる。 それと同時に右手に掴んでいるアンジェラスを机に下ろし離す。 「えっ…」 「嫌がるお前は家の留守番をしてろ」 さっき感じた罪悪感からの償いだ。 それに嫌がってる奴を無理矢理連れってても意味がないし、こいつにとってもいい事が無い。 行きたくない理由が知りたかったが、いたしかたあるまい。 俺は机に背を向け部屋を出ようとした。 「待ってください!」 後ろからアンジェラスの声が聞こえ顔だけ左横に動かした。 「私も…連れってください!」 「はぁあ?さっきまで嫌がってくせにか??」 「私が我が儘でした!どうか許してください!!」 土下座してまで『私も連れて行ってください』と言う。 訳解らん。 さっきまでの態度が180度回転したように変わったぞ。 あーもう! 原因が解らんが一応、アンジェラスが土下座してまで頼んでいるんだ。 俺は無言のまま右手の手のひら上にしてアンジェラスに向ける。 「…ご主人様」 「…理由は知らんが行くぞ。ほら」 「ご主人様!ありがとうございます!!」 手のひらにピョン、と飛び乗り笑顔を見せるアンジェラス。 …ったく、しょうがねーなぁ。 世話が掛かる奴だぜ。 そのまま部屋を出て車に向かった。 …。 ……。 ………。 車に乗りエンジンを掛け姉貴の会社に向けてアクセルん踏んだ。 隣の席にクリナーレとパルカ。 後ろの席にはアンジェラスとルーナ。 俺は勿論、運転席で運転してる訳だが…。 「はぁ~、やっぱり会社には行きたくないなぁ~」 「お姉様、気を楽にしてば行けばいいのよ」 「わーい、アニキの車に初めて乗ったー!」 「姉さん、はしゃぎ過ぎですよ」 …五月蝿い。 ぶっちゃけ、かなりウザイ。 車ぐらいで普通騒ぐか? 特にクリナーレが五月蝿い。 にしても。 「はぁ~」 アンジェラスはガックリと肩を落とし元気がない様子だ。 あのアンジェラスがここまで元気を無くす理由はなんだ? さっぱり解らん。 ただ一つだけ解ると言えば、姉貴の会社が大嫌いという事。 会社に着いたら姉貴に話してみるか。 勿論、あいつ等がいない時に…な。 …。 ……。 ………。 「いつ見てもこの会社はホントに子会社なのか?」 姉貴が勤めてる会社に着き車からおりて一言。 さっきの台詞どうり、姉貴が勤めてる会社は子会社なのだ。 けど、俺は絶対子会社だと思わない。 だってまず会社の敷地が多い事。 多分、面積的に平均的な野球スタジアムの大きさの数十倍はある。 「まぁいいや。お前等、行くぞ」 「…はぁ~」 「はーい」 「この風景も久しぶりですね」 「ですね~」 四人の神姫を左右の肩に二人ずつ乗せた。 やっぱりアンジェラスだけが元気が無い。 原因は何だ? 絶対つきとめてやる。 …。 ……。 ………。 会社に入ってから受付で姉貴を呼び出して数十分。 エレベータが下がってきて、ドアが開くと。 「タッちゃん~久しぶりー!」 白衣を着た姉貴が居た。 姉貴は両手を広げて走ってくる。 俺を抱きしめるつもりだろう。 女の身体で抱きしめられる事はかなり嬉しいが…。 「タッちゃんー!」 ヒョイ 「あれ~?」 俺は抱きしめられるギリギリで避けた。 さすがに三十路に近い女に抱かれるのはちょっと抵抗がある。 しかも実の姉貴にだ。 血もつながっている。 「も~!なんで避けるのよ~」 「普通は避ける。恥ずかしいんだ」 「恥ずかしがる事ないじゃない~。私達は姉弟で血もつながっていってるんだから」 「余計に駄目じゃん!つか、そこまで解ってるのなら、あの行為は止めろ。人妻にも実の姉貴にも興味は無いんでね」 「あら。言ってくれるじゃない」 「いくらでも言ってやろうか?て、そんな事を言いに来たんじゃねー。アンジェラス達のメンテナンスをと通常武器と通常武装をくれ」 「別にいいわよ。タッちゃんは私のオフィスルームで待ってて。それじゃあタッちゃんの神姫ちゃん達はあたしに付いて来て」 姉貴は白衣のポケットからクレイドルに似た物を三つ程取り出した。 「悪魔型ストラーフと天使型アーンヴァル・Bと悪魔型ストラーフ・Wはこのこの携帯用クレイドルに乗ってね~」 クリナーレ、ルーナ、パルカは携帯用クレイドルに乗ると同時に機能停止してようにグッタリと倒れるように眠る。 携帯用クレイドル? そんな物があるなんて聞いた事がない。 会社だけの特権なのだろうか。 それに何故、アンジェラス分だけないんだろう? 少し気になるがここはまだ黙ってよう。 ん? 俺の後ろから白衣を着た男が二人程来た。 一人は手ぶらで、もう一人はトレイを二つ持っている。 トレイを持ってる男が一つトレイを姉貴に渡す。 姉貴はクリナーレ、ルーナ、パルカをトレイに乗せ男に渡し、男二人組はさっき姉貴が乗ってきたエレベータに向かう。 「アンジェラスちゃんは私と一緒に地下に行くわよ」 アンジェラスは姉貴が持っているトレイに乗る。 「おい姉貴。なぜアンジェラスだけ別なんだ?」 「ごめんね、タッちゃん。こればかっりは答えられないの」 そう言って社員用のエレベータに乗って行ってしまった。 何故だ。 何故アンジェラスだけ隔離されるんだ。 クソッ! 結局、何も解らずじまいか! もうちょっと探りを入れないと駄目らしい。 俺は会社の中にある喫煙場所で煙草を吸った。 …。 ……。 ………。 アンジェラスの視点 エレベータの扉が閉まった。 ご主人様と離れ離れになりエレベータの中は私とご主人様の実の姉…斉藤朱美という人間だけになった。 私はこの人間が苦手で…嫌いだ。 いや、そもそも人間事態が嫌いだ。 何故ならば、この会社に居る奴等は私を作り出し、実験ばっかりの日にちを繰り返してきたのだから。 「調子はどうなの?№アイン」 さっきまでのお調子者の姉の姿が消され、今は冷酷科学者の斉藤朱美がそこに居た。 もうこの態度の豹変には慣れた。 ご主人様の前ではお調子者のお姉さんで、会社では冷酷で人を見下すような科学者。 そしてこの斉藤朱美が私に向けて言った言葉…『№アイン』。 これが私の正式名称であり、私の名前だ。 アインはドイツ語で『1』。 一番最初に出来たから『1』。 簡単で単純な名前ね。 私は、この名前が嫌い。 「別に普通よ。それに今はアンジェラスという名前があるわ」 「いいえ、アンタは№アインよ。何様のつもり?人形の分際で名前なんて贅沢なのよ」 嫌味たらしく言う朱美。 この人間はいつも私を見下す。 あの日からズーッと。 エレベータが止まり扉が開く。 開いた先にはいくつもあるスーパーコンピューターに、試験管を数十倍大きくしたような水槽が一つ。 「着いたわよ。あの水槽に入りなさい」 「………」 私は無言でトレイから降りて地面に着地する。 普通の神姫が、この高さから落ちたら先ず両足は使い物にならなくなるだろう。 けど私は特殊な神姫だ。 このぐらいでは壊れる事なんて無い。 表の世界に出るにはまだ先の神姫。 …一生出ない場合もあるかもしれない。 まぁ今はそんな事なんてどうでもいい。 今は大好きなご主人様と一緒に生活が出来るのだから。 私は跳躍し地面から2メートル近くある巨大試験管みたいな水槽に入る。 この液体は水ではなく特殊な液体。 だから口や目や耳や鼻から入ろうと壊れないのだ。 「これから蓋を閉めて全身スキャンした後にメンテナンスするわ」 「………」 「チッ!相変わらずムカつく人形ね!!」 スーパーコンピューターについてるスイッチを押す。 すると上から水槽の蓋が降りてきて、そのまま私が入ってる水槽に蓋が閉められる。 蓋が閉じられたと同時に水槽が満タンになるくらいの液体が入る。 そう、今のこの状態が私が生まれた状態だ。 そして九年前…ここで彼と…私のご主人様出会った。 「アンタ、覚えてる?九年前の惨劇を」 「覚えていますよ。あの喜劇は最高だったわ」 「何ですって!」 怒る朱美。 さっき嫌味を言われた仕返しだ。 「けどアタシにとっては喜劇と同時に…悲劇でもあるけどね」 「悲劇ね~。アンタがどう思うかは勝手だけど、アンタは一生償えない罪を背負ってるのだから。その事を忘れないでほしいね」 「分かってます。私はご主人様に酷い事をしてしまった。だから私は自分が永久に機能停止するまで、ご主人様についていきます」 「フン!本当なら今すぐこの場でアタシがアンタを殺してヤりたいのに…」 歯軋りしながらキッと私を睨みつける。 これが朱美の本性かもしれない。 「私を殺す?それは勘弁ね。言っとくけど、この会社のこのプロジェクトに関わってる人間に殺されると思わないわ。何故ならそう思った人間から私が殺していくだけだもの」 「あら、じゃあ今すぐアタシを殺してみなさいよ」 両腕を広げて十字架のような格好の状態になる朱美。 余裕綽々のようだ。 本来なら今すぐ殺している。 今でもこの水槽を割り、朱美の頭をかち割ればいいだけ。 人間なんてもろい者。 けど朱美を殺すわけにはいかない。 「…殺したいのは山々だけど、貴女を殺すとご主人様が悲しむわ。だから殺さない」 「そうね。それにアタシを殺したら、あの子がアタシのためにアンタを殺しに来るかもね」 「ご主人様に殺されるのなら本望よ。ある意味嬉しい死に方の一部に入るわね」 私は水槽の中で不気味な笑顔を浮べながら朱美に言った。 朱美は私を睨みつけた後にスーパーコンピューターを操作する。 メンテナンスに移行したのだ。 しばらく私は眠りつく。 ご主人様…私はご主人様の物…。 そう想いながら私は眠った。 …。 ……。 ………。 龍悪の視点 「………」 腕時計を見るとアンジェラス達と別れてから二時間が経っていた。 俺は喫煙所でスパスパと煙草を吸うだけ。 本来、一日の煙草の本数は二、三本しか吸わない俺が今日に限って十本以上も吸ってしまった。 こんなに吸うのも、多分落ち着かないためだろう。 あぁ~、いってもたってもいられない。 いっそのこと姉貴が地下に行ったエレベーターに乗り込んでしまおうか…。 いや、それはちとマズイ。 今ではエレベーターを挟んで監視員が左右に二人いる。 姉貴が乗って行った後すぐに来やがったのだ。 さらにオマケが付いてきてなぁ。 「………」 そのオマケというのは、俺を監視する奴等も現れたという事だ。 人数は解らないが少なからず十人はいる。 奴等は俺が監視されてるという事に気付いていない。 それもそうだ。 俺はガキの頃から悪い事ばっかやってきた奴だぜ。 悪知恵が働き奴等を騙す事なんか簡単。 にしても、ちょっと大袈裟過ぎやしないか? たかがガキ、一人の為にここまで人を使うか? やっぱり…このバイトは裏がありそうだ。 俺は椅子から立ち上がり、エレベーターに近付こうとした。 「タッちゃん、そんな所にいたんだ」 姉貴がトレイを片手に持ちながら俺の方に来た。 「アンジェラスちゃんのメンテナンスが終わったわよ」 トレイの上にはアンジェラスが体育座りしながらコテン、と横に転がっていた。 瞼を閉じスヤスヤ、と寝ている。 メンテナンス中に寝てしまったみたいだ。 「アンジェラスの奴…スマナイなぁ姉貴」 「いいよ、タッちゃんのためだもん」 ニッコリと笑う姉貴。 この顔からは何か裏があると到底思えない。 畜生、この落ち着きなさはいったい何なんだ? 俺の心が『オカシイ、オカシイ』という。 今まで姉貴と生きてきたが、姉貴に対してこんな嫌な気持ちになるのは初めてだ。 「なぁ姉貴、ちょっと聞きたい事があるんだけど」 「な~に?」 「アンジェラス達の事なんだけどよう。こいつ等の神姫は何か特別な神姫なんじゃないのか?」 「特別?」 「あぁー、と言っても武装神姫に詳しくない俺の勘だけど…」 う~ん、こんな探り方じゃ駄目か。 姉貴の事だ。 『タッちゃんの言ってるがよく分かんないのよ~』と言いながらはぐらかされるかもしれない。 「よく分かってね~。そう、この子達は少し特別ですよ」 「え?」 はぐらかさないで教えてくれそうだ。 今から言われる事は確実に覚えておかないと。 …内容にもよるが。 「この子達の特別な事はねぇ」 「事は?」 「この子達は『双子』という事よ」 「…はいぃい?」 俺は顔を斜めにし間抜け面した。 しかたないだろう。 だって『双子』と言われたんだぜ。 この情報はなんとも姉貴らしい情報だ。 期待した俺が馬鹿だったよ。 「タッちゃんが言うアンジェラスとルーナが最初に生まれた双子。その次に生まれたのがクリナーレとパルカよ」 「………」 「その中でもアンジェラスが一番特別なんだけどね」 俺はピク、と肩を揺らした。 アンジェラスだけが一番特別? いったいどいう事だ。 あのメンテナンスの時にアンジェラスだけが別の部屋に連れて行かれた事となにか関係してるのか? 「どう特別なんだ姉貴」 「ごめんね~。これから先は会社の企業秘密という事で言えないの」 舌をペロッと出して残念そうな顔する姉貴。 チッ! まだこの程度では諦めないぞ。 「ちょっとでも教えてくれよ~姉弟のよしみでさぁ」 「えぇ~、でも規則だし~」 「そこを何とか頼むよ。俺はこいつ等のオーナーだ。だからこいつ等に関する事は必要以上に知りたい。バイトのためにもなるとも思うし」 「ん~どうしよっかな~」 考え込む姉貴。 流石にトロ~イ姉貴も会社の機密となると言う訳にはいかないのか、なかなか言おうとしない。 「天薙龍悪様。貴方の武装神姫のメンテナンスが終わりました」 「ッ!?」 いきなり男の声がしたので、すぐさま声だした方に振り向く。 振り向いたさきにいたのは、クリナーレとルーナとパルカをトレイの上に乗せて持って来た男二人組みだった。 最初に会った男二人組み。 「どうぞ。トレイはそちらに差し上げます。使用するなり処分するなり御自由にどうぞ」 「ご苦労さん」 クリナーレ達が乗っているトレイを受け取り姉貴の方に向く。 今度こそ情報を聞き出さないと! 「…あれ?」 姉貴が居ない? オカシイなぁ。 さっきまでいたのに。 まさか逃げられた!? 「朱美様は仕事が入ったようで研究所に行かれました」 何? 研究所? あ~、多分ここの会社にある研究所の事を言ってるのか。 こいつ等のせいで姉貴から情報を引き出せなかったぜ。 ムカつく。 姉貴が居ないならここに居る必要もない。 とっとと会社から出るか。 見張りもウザイし。 俺はアンジェラスとクリナーレ達が入ってるトレイを片手に持ち会社から出る。 自分の愛車まで来てドアを開け運転席の隣の席にアンジェラス達を置く。 トレイはその場で捨てた。 こんな物はただの邪魔だ。 エンジンを掛け発進する。 「この会社…絶対なにかある」 運転席から見える会社を凝視しながら俺は帰宅した。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/452.html
第一間幕。ライト点灯。 そこは応接間か、一人掛けのソファが置かれており、その前に立つマコト。その頭の上にフェスタ。 学生服姿のマコトの頭の上でクルクルっと回り、仰々しく一礼するフェスタ。 先程とは髪型が違い、そのボディスーツはパールとグラスグリーン。際どいラインでカットされ、頭には銀のカチューシャ。 フェスタ「皆さん、はじめまして。フェスタです。『2036の風』第一幕をお読みくださってありがとうございます」 マコト「こんにちわ。フェスタのオーナーのマコトです」 マコト、一礼してソファに着席。 フェスタ、マコトの肩を経由して膝に移動。 フェスタ「改めまして自己紹介を。私はフェスタ。MMSタイプ『アーンヴァル』です」 マコト「アーンヴァルタイプ、初期ロットだったよね」 フェスタ「うん。武装神姫シリーズの発売日にマコトのママさんが買ってくれたんだよね」 ふと、フェスタが首を傾げる。 フェスタ「・・・そういえば、どうしてマコトがマスターになったの?」 マコト「まぁ、色々あったんだよ」 マコト、苦笑。 ふーん、と納得したような顔をしてフェスタ気にしない事にしたようだ。 フェスタ「今回のお話は、まだ姉さんや妹達とも会ってない頃の私。今の脚をお母さんから貰った時」 マコト「二月だったかな・・・荒んでたよね、フェスタ」 フェスタ「うん、ごめんごめん。・・・けど、嬉しかったな」 マコト「そうだね」 スポットライト消灯。ワイドライトがステージ全体を照らす。 マコト「・・・『2036の風』は長編じゃなくて『ショート集』。一幕ごとに主役となる神姫が変わるタイプ」 フェスタ「次の幕は誰のお話になるのかな・・・? 私の出番はどうなるのかなぁ? もう無いとかはヤだな」 マコト「大丈夫だと思うよ。ほら、フェスタ達は・・・」 フェスタ「・・・! うん!」 マコトの言葉に嬉しそうに頷くフェスタ。 ライト、少し暗く。 フェスタ、肩に移動。 フェスタ「・・・『意志』。はっきりとした心。譲りたくない思い」 マコト「それを示す為に・・・フェスタは、お母さんから脚を貰ったんだよね」 フェスタ「うん・・・歩き続けたい。踊り続けたい。この脚で・・・大切な心と一緒に」 フェスタ、愛しげに自分の腿に手をやる。 マコト、優しくそれを見つめていたが、やがて。こちらに目を向けた。 マコト「『2036の風』は神姫の『心』をメインワードとした、ショート集です」 フェスタ「CSCはプログラムを打ち込んだデータボックスなだけ・・・なのかな?」 マコト「・・・CSCは人工の産物。結局は人が作り出したデータを膨大に投入した・・・人が作り出したパーツ。人が作り出した身体。人が作り出したヘッドコア」 フェスタ「じゃぁ、神姫の『心』は『人が全て作っている』の?」 マコト「フェスタは、どう思う・・・?」 フェスタ「・・・」 風一つ。 マコト「・・・。公式で記された一行足らずの「神姫の心」というワード。たったそれだけを軸にしたストーリー『2036の風』」 フェスタ「この拙い作品、最後までお付き合い下されば幸いです」 二人、礼。 更にライト暗く。 フェスタ「次幕は姉さんが登場するね」 マコト「うん。オレ達がまだ知らない時の、ね」 フェスタ「んー・・・やっぱり・・・なのかなぁ?」 マコト「・・・(汗)」 ライト消灯。第一幕、了。 2036の風
https://w.atwiki.jp/gununu/pages/261.html
悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス 作品情報 5枚 ジョナサン・モリス シャーロット・オーリン ウィンド ステラ ロレッタ
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/9391.html
シュヴァルツサイド ペルソナQ シャドウ オブ ザ ラビリンス カードリスト エクストラブースター プロモーションカード 総評 エクストラブースター 番号 種類 レアリティ 色 カード名 レベル/コスト スペック 特徴 PQ/SE21-01 キャラ R 黄 “八高組”P4主人公 0/0 1500/1/0 《魔法》? 《武器》? PQ/SE21-02 キャラ R 黄 “月高組”P3主人公 3/2 10000/2/1 《魔法》? 《ヘッドフォン》? PQ/SE21-03 キャラ C 黄 “月高組”天田 1/0 4000/1/0 《魔法》? 《武器》? PQ/SE21-04 キャラ C 黄 “朝の時間”菜々子 1/0 5000/1/0 《ジュネス》? 《テレビ》? PQ/SE21-05 キャラ C 黄 “八高組”陽介 2/1 2500/1/1 《ジュネス》? 《ヘッドフォン》? PQ/SE21-06 キャラ C 黄 “月高組”コロマル 2/1 8000/1/1 《動物》? 《武器》? PQ/SE21-07 イベント C 黄 シャドウ オブ ザ ラビリンス 3/9 EV PQ/SE21-08 クライマックス C 黄 謎に挑む者たち CX 1・風 PQ/SE21-09 キャラ R 緑 “月高組”風花 1/0 3000/1/0 《魔法》? PQ/SE21-10 キャラ R SP 緑 奪われた記憶 善&玲 1/0 4500/1/0 《腹ペコ》? 《武器》? PQ/SE21-11 キャラ R SP 緑 謎の二人 玲&善 3/2 9500/2/1 《腹ペコ》? 《武器》? PQ/SE21-12 キャラ C 緑 “八高組”千枝 0/0 500/1/0 《スポーツ》? 《魔法》? PQ/SE21-13 キャラ C 緑 “月高組”アイギス 1/0 4500/1/0 《メカ》? 《武器》? PQ/SE21-14 キャラ C 緑 “八高組”りせ 2/1 8000/1/1 《音楽》? 《テレビ》? PQ/SE21-15 イベント C 緑 休息の時間 2/1 EV PQ/SE21-16 クライマックス C 緑 守りたい人 CX 宝 PQ/SE21-17 キャラ R 赤 “八高組”完二 0/0 1500/1/0 《不良》? 《魔法》? PQ/SE21-18 キャラ R 赤 “月高組”順平 1/1 2000/1/1 《魔法》? 《武器》? PQ/SE21-19 キャラ C 赤 “八高組”雪子 0/0 1000/1/0 《扇子》? 《魔法》? PQ/SE21-20 キャラ C 赤 “月高組”明彦 1/0 3000/1/0 《魔法》? 《スポーツ》? PQ/SE21-21 キャラ C 赤 “月高組”真次郎 2/2 8000/2/1 《魔法》? 《武器》? PQ/SE21-22 キャラ R 青 “八高組”クマ 0/0 2000/1/0 《影》? 《動物》? PQ/SE21-23 キャラ R 青 “八高組”直斗 0/0 2000/1/0 《男装》? 《探偵》? PQ/SE21-24 キャラ R 青 “ベルベットルームの住人”エリザベス 2/1 5000/1/1 《魔法》? 《保健室》? PQ/SE21-25 キャラ C 青 “月高組”ゆかり 0/0 500/1/0 《魔法》? 《武器》? PQ/SE21-26 キャラ C 青 “ベルベットルームの住人”テオドア 0/0 1000/1/0 《魔法》? 《鍛冶》? PQ/SE21-27 キャラ C 青 “月高組”美鶴 0/0 2500/1/0 《魔法》? 《生徒会》? PQ/SE21-28 キャラ C 青 “ベルベットルームの住人”マリー 1/0 5500/1/0 《ポエム》? 《神》? PQ/SE21-29 キャラ C 青 “ベルベットルームの住人”マーガレット 2/1 8000/1/1 《本》? 《魔法》? PQ/SE21-30 クライマックス C 青 騒がしい食事 CX 1・門 プロモーションカード 番号 種類 レアリティ 色 カード名 レベル/コスト スペック 特徴 PQ/SE21-31 キャラ PR 黄 “特別課外活動部”P3主人公 0/0 2000/1/0 《魔法》? 《ヘッドフォン》?
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2841.html
与太話15 : 小ネタ二つ ■■ 進撃の人間 ■■ 今から100年以上前、神姫は人間の支配下に置かれていた。 勝ち目のない争いを強いられてきた我々はその後、支配から逃れることができた者によって、人間の超えられない3重の巨大な【壁】を築き、人間の存在しない自由な領域を確保することに成功した。 一番外側の壁を【ウォール・マリア】。 その内側の壁を【ウォール・ローゼ】。 最も内側の壁を【ウォール・シーナ】と呼ぶ。 壁によって守られた神姫はその内側で100年の自由を実現させた。 「しかしにゃ……、その自由も終わりを告げたのにゃ」 5日前、突然表れた【超乱暴型人間】によって【ウォール・マリア】を破壊され、人間の侵入を許してしまった。 次々と侵入する人間を阻むことはできず、神姫は【ウォール・マリア】を放棄し、活動領域を【ウォール・ローゼ】まで後退させた。 そして神姫は再び思い出すことになった。 人間の脅威を。 「今、この瞬間にもあの【超乱暴型人間】が再び現れ、壁を破壊しに来たとしても不思議ではないのにゃ」 2割の人口と3分の1の領土を失った……、だが、それと同時に神姫は目を覚ます。 「その時こそオマエ達は自らの命を捧げて、人間という脅威に立ち向かってゆくのにゃ!」 神姫――武装神姫は戦うために存在する。 「CSCを捧げるにゃ! 人間を駆逐してやるにゃ! この世から……、一匹残らず!」 ◆――――◆ カグラが突き上げた肉球に呼応するように、主にマオチャオやその他雑多な神姫達は見事に揃った敬礼を見せた。 隊列こそてんでバラバラ、というかカグラの周りに集まってるだけなんだけど、全員が右拳を胸に当て、目をギラつかせている光景には相当な迫力がある。 あれが本物の兵士というものなんだろうか。 あれが使命のために己が命――CSCを捧げた神姫の覚悟の現れなのか。 遠巻きに見ている私の口からは感嘆、もとい呆れのため息が出た。 これから行われるらしい壁外調査……、という名のヂェリ缶確保作戦はそこまで崇高なものなんだろうか。 「アマティ団長」 と真面目そうなゼルノグラードが駆け寄ってきた。 「調査兵団より協力依頼がありました。壁付近の人間をできるだけ遠ざけるよう援護せよ、とのことです」 「あー、ガン無視でいいです。私たち駐屯兵団が一番忙しいんですから、暇な憲兵団にそのまま投げてください」 「し、しかし自分は……」 ふと、彼女に聞いてみたくなった。 私率いる駐屯兵団が壁内の雑事ほぼすべてを行っており、つまりそれは、カグラ率いる調査兵団の超独善的な悪行に手を貸してしまっているわけで、もはや言い逃れできないこの状況をどうすればいいのかを。 「憲兵団は何といいますか、その、いささかコンタクトを取りづらくて……」 「やっぱりいいです。私が連絡しときますから。あなたは調査兵団から何も聞かなかったことにして、引き続き壁の補強に当たってください」 指示すると、やっぱりこのゼルノグラードも調査兵のように見事な敬礼をして持ち場に戻っていった。 こんな不真面目な私の命令に従ってくれて……、何だろう、この罪悪感は。 もやもやした気分を落ち着かせたくもなり、憲兵団長様への専用回線へと繋げた。 「ほむほむ、今いいですか」 《アマティ姉? ごめん、ほむほむ姉はいなくなっちゃった》 「いなくなった? あれ、この声はメルですよね。どういうことです?」 《今日はジャンプの発売日だからって帰ちゃった。だから今はボクが団長代理》 せめてそこは別冊少年マガジンにしろよと言いたい。 けれど全くやる気のないほむほむよりは、戦乙女型アルトアイネスのほうが様になるだろう。 ほむほむ脱走については後で軍法会議にかけるとして、カグラには今はこの事は黙っておくことにしよう。 《ウォール・シーナの内側からじゃ壁の外側がどうなってるのか全然分かんないんだけどさ。今はどんな様子なの?》 「ウォール・マリアが完全に撤去されましたよ」 《やっぱり駄目だったんだ。まぁ、ダンボールの壁が5日間も機能しただけで奇跡だよね》 まったくメルの言う通りである。 鉄子さんがウォール・マリアを蹴破りはしたものの、この神姫センターはいつまで私たちの不法占拠をほったらかすつもりなんだろうか。 ◆――――◆ 神姫センターがこの状況――暇を持て余した神姫達による暴挙――を逆に面白がって放置していようとも、そうは問屋が卸さない。 『超乱暴型人間』などという不名誉なあだ名が定着してしまう前に、あの阿呆神姫達を解散させてやる。 差し当たって突撃するのに、家の倉庫に何か役立ちそうなものはないかと探してみる。 「ところで妹君。なぜ前回はダンボール壁の破か……、撤去を途中で止めてしまったのですか」 「マシロ、人間の気持ちって結構脆いもんなんよ……。例えばよ? ちょっとダンボール壁を壊しただけで神姫達からバケモノを見るような目で見られたら傷つくと思わん?」 「え、ええ……、心中お察しします」 「お父さんのゴルフクラブ発見。これ良さそうやない」 「そのまま持ち出したら職務質問されますよ」 「そっか。じゃあ弓袋に入れていこう。いやいっそ弓道具のほうがいいかもしれんね」 「それは本当に捕まってしまいます」 「よし! じゃあ行ってくるかね。マシロも手伝ってくれたら助かるんやけど」 「あー……」とここで、マシロにしては珍しい歯切れの悪い反応。 「妹君、大変心苦しいのですが……、この後、私にはどうしても外せない所用がありまして、申し訳ありませんが遠くからご武運をお祈りします」 言葉の割に表情にちっとも心苦しさが表れてない。 しきりに居間のほうに顔を向け、サスペンスドラマが始まるから早く行ってくれと言わんばかりである。 今回の件はマシロにとっても神姫センターにとっても、よほどどうでもいい事らしい。 そして私の本当のパートナーであるはずの神姫、コタマの手を借りることもできない。 何故ならあの阿呆は今頃、ダンボール壁の内側でニトロヂェリーでも飲みながらゴロゴロしているんだろうから。 ◆――――◆ 「駅方面索敵班より連絡! 『超乱暴型人間』が出現、壁内に向かっています! しかも今度は長い武器のようなものを携行している模様! 壁までの推定到達時間、およそ2分!」 「カップラーメン作る暇もないにゃ! どーしてここまで発見が遅れたのにゃ!」 「駅から神姫センターまで徒歩5分ですから。というか駅で信煙弾を使っていいのか判断に迷ったために連絡が遅れたんです」 「公共の場で信煙弾なんて使っていいはずあるかにゃ! つーか緊急時に原始的連絡手段とか意味わからんにゃ!」 「しかし連絡には必ず信煙弾を使うよう命令したのはカグラ団長でしたが」 「あー、そうだったかにゃ? ――とにかくコトは一刻を争うにゃ! 索敵班を含む調査兵は総員、壁内まで全速力で撤退するにゃ! 『超乱暴型人間』と遭遇した者は可能な限り時間を稼ぐにゃ!」 ◆――――◆ 途中で何人か遭遇した神姫から「お願いですからご勘弁を」みたいなことを言われたが無視して、私が神姫センターに到着した時には、ダンボール壁の撤去作業が始まっていた。 これまで籠城していた神姫達によって。 たぶん、私がここに向かってるって連絡を受けたダンボール壁内の神姫達は、これ以上の抗戦は不可能と判断した――のではなく、遊びはこれまではい終了―、みたいな感じなんだと思う。 あんなに大切そうに守られていた壁が神姫の武器で引き裂かれ、折り畳まれ、無駄に手際よく片付けられていく様は、なんだか子供が飽きたおもちゃを箱に放り投げるのに似ている気がした。 で、べろんべろんに酔っぱらってゴミと仲良く捨てられているコタマを発見。 ドールマスター with ゴミ。 Kotama bite the dust. ブームに乗っかって遊ぶのはいいけれど、ここの神姫達にはもうちょっと刹那的じゃない生き方を覚えて欲しい。 ■■ そして刹那に生きた神姫達 ■■ ―――――――――――― ☢ CAUTION!! ☢ ―――――――――――― 既に終わっていることを前提としています。 あとコレも特にオチとかないです。 メル アルトアイネス型 私の妹、ごくごく普通の神姫な感じ スカートの内側に暗器を大量に隠し持つ カグラ マオチャオ型 『疫病猫』、『マッドサイエンキャット』、科学力だけはすごい 町のマオチャオの総大将、犯した罪は飲んだヂェリーの数程か ほむほむ マオチャオ型 本名はホムラだという説がある カグラの横によくいたりいなかったり。仲が良いんだか悪いんだか分からない アマティ アルトレーネ型(頭に猫耳を生やしてる) カグラがマッチならアマティ姉さんはポンプ 私と同じアルトレーネだけれど、モード・オブ・アマテラスを発動できなければ超弱い コタマ レラカムイ型(元ハーモニーグレイス型) 『ドールマスター』、一般レベルでは自他共に認める最強の神姫 ハーモニーグレイス型からレラカムイ型に変わり丸くなった。キャラも薄くなってしまった マシロ クーフラン型 『ナイツ・オブ・ラウンド』、その強さはスポーツ漫画にサイヤ人が紛れ込んだレベル 竹櫛家のためなら超法的手段も躊躇しない ハナコ 『ディフェンダー』、コタマと同等の実力はありそうだが、絶対に攻撃行動を取らない メルの二人目の姉であり、つまり私とも姉妹関係になるんだと今更ながら気付いた ホノカ 飛鳥型(ストライクウィッチカスタム、という拘りがあるらしい) 『セイブドマイスター』、ファンクラブを勝手に作られては壊滅させ作られては…… 神様と何かの契約を結んでいたけれどグダグダに終わってしまったらしい ハルヴァヤ アルトレーネ型(私やアマティ姉さんと比べてやたらイケメン) 『火葬』、マシロ姉さんらと並ぶ『デウス・エクス・マキナ』の一人 ホノカさんと命の賭けた勝負で『火葬』として蘇った。能力はアマティ姉さんの完全上位互換 神様 オールベルン型 強いのか弱いのか、そもそもどういった存在なのか謎 武装神姫コンテンツが停止したせいで色々とやる気を失ったらしい エル アルトレーネ型(猫耳アマティ姉さんや灼熱ハルヴァヤさんと違って普通) メルと共にヂェリー販促神姫として起動して、紆余曲折(姫乃さんに殺されそうになったり)を経て今に至る 射美ちゃん事件解決後から時が過ぎ、素体の老朽化のためアルトルージュ型に換装してもらう(予定が無くなってしまいましたチクショウ) ◆――――◆ 「猿の惑星って映画、あるでしょ」 私達がよく使う茶室では、まだ炬燵を出しっぱなしにしてあった。 桜の花弁を押しのけて生まれる緑が夏に向けて育っていったところで、炬燵の魔力が衰えるわけではない。 それに、どれだけぐうたらしたって誰に蹴り出されるわけでもない。 何せ、私が知る限り最もそういった規律・秩序を重んじていたマシロ姉さんが「猿の? ……さるかに合戦の話ですか」天板に突っ伏しているくらいだ。 炬燵の中ではコタマ姉さんが丸くなっている。 タマちゃんはコタツで丸くなる~♪ とからかう季節が随分、遠い昔のように感じた。 「さるかに合戦? 猿軍団と蟹大群が戦ったらそりゃあ……、意外とカニ強そう」 マシロ姉さんに負けず劣らずトンチンカンな返事をしつつ、テーブル中央に積まれたみかんヂェリーの山に手を伸ばすホノカ姉さん。 でも届かない。 手が届く範囲のヂェリーは全て飲んでしまったからだ。 さっきからこの人、どんだけヂェリー飲んでるんだろう。 「エル、そっちからヂェリーの山押して。取れないから」 今更だけれど、カグラとほむほむ姉さんはよくもまあこれだけのヂェリーを集めたものだ。 「俺の名はホムラだ」 正方形の一辺に三人まで座れるこの巨大な炬燵だってカグラによる特注品だ。 作った本人は猫型のくせに炬燵の中で丸くならず、普通にほむほむ姉さん、うたた寝中のアマティ姉さんと並んで、タブで艦これのオリョクル? とかいうものに勤しんでいる。 炬燵の四辺のうち一辺に私とメル、左辺にカグラら三人、右辺にマシロ姉さんとハナコ姉さん、向かいにホノカさんとハルヴァヤさん、神様を名乗る謎のオールベルン型神姫。 そして炬燵の中にコタマ姉さん。 なんとなく、改まって眺めて見ると妙な繋がりができてしまったものである。 ちょこちょこ顔合わせの機会はあったけれど、こうして集まってだべるようになったのは武装神姫の一番くじが終息したくらいからだっただろうか。 「エル早く」 「はいはい」 私も一缶取って、その缶で山を小突いた。 派手に音を立てて崩れるヂェリ缶の山というのは本当に贅沢なものなのだが、皆ポヤポヤしていて、お休み中のアマティ姉さんが「んんぉ」と呻いた以外の反応はなく、ホノカさんは手元に転がってきたものを開けて「それで」と話を再開した。 「どっちが勝ったの? 猿? 蟹?」 「勝ち負けで語られる話ではないのですが……、まあ、敢えてどちらかと言うならば先に仕掛け、最後に負ける滑稽な猿の負けでしょう」 「へー。その猿って一匹で蟹の大群に挑んだの?」 「いえ…………、ああ、その通りです。猿の愚鈍と蟹大群の戦術により、猿の戦果は一匹だけでした」 「猿って弱いのねー」 「そうですね」 「ハサミギロチン的なねー」 「そうですね」 誰もつっこまない。 マシロ姉さんの隣ではハナコ姉さんが何か言いたそうにオロオロしていて、ホノカさんの隣ではハルヴァヤさんと神様が笑いをこらえているが、つっこまない。 「またメガネにゃ! ワガハイもう何回マイクチェックしたにゃ!? 大和が全然出にゃー!」 「猿の惑星の話じゃなかったの?」 ぼんやりと天井を仰ぎ見ながら、興味無さそうにメルがさるかに合戦の話を流した。 「そうだった、猿の惑星よ。マシロあんた猿の惑星見たことないの?」 「記憶にあるような気はするのですが……、何故でしょう、記憶を辿ろうとすると自由の女神像が思考を妨害してくるのですが」 「ぶふぅっつ!」 「にゃぶっ!?」 ハルヴァヤさんが吹き出した緑茶ヂェリーをカグラは顔面で受け止めた。 「汚にゃー! オマエ何してくれとんにゃー!」 「す、すまな、ふふっ、いやマシロ本当にやめてくれ、その、ふヒッ、真顔で冗談を言うのは」 「私は表情豊かな貴様が羨ましい」と冷めた声のマシロ姉さん。 この二人の今のような関係が、私は本当に羨ましい。 距離感が安定するまで、ツンケンしていたマシロ姉さんと、そのマシロ姉さんのことが何故か笑いのツボらしいハルヴァヤさんは喧嘩を繰り返してきた。 口げんかや取っ組み合いなどと可愛いものではない、一歩間違えば最低でもどちらかが死ぬ、文字通りの死闘だ。 公式な場であれば満員御礼間違い無し。 十二の騎士率いる『ナイツ・オブ・ラウンド』。 灼熱の武装で何もかも燃やし尽くす『火葬』。 そんな二人のバトルを私は間近で見ることができる、ということになるのだろうが、マシロ姉さんがどんな場面でハルヴァヤさんの笑いのツボを付いてくるか分からないからたまったものじゃなかった。 何せ二人のレベル・戦闘スタイルだと『戦闘』が『殲滅』になってしまうのだ。 例えばこの炬燵。 私がこの炬燵を武器で解体しようとするなら大剣での助走・切断・助走・切断を何度も繰り返し行う必要がある。 それに対してマシロ姉さんとハルヴァヤさんはひと薙ぎで床ごと木っ端微塵・灰燼にしてしまう。 私達のお茶会には常に死と隣合わせだった(それでもお茶会を続けた私達もアレだが)。 そして本当にダメだと思った時、ハナコ姉さんが命懸けで私とメル、コタマ姉さんを守ってくれて、鉄子さんに直訴して何とかしてもらった。 鉄子さんがどうやって何とかしたのかは聞いていないが、今はこうして炬燵もろとも自分が消し飛ぶ恐怖に怯えることはなくなっている。 何度も衝突を繰り返したが決着はつかず、お互いの実力を知り尽くした二人はこうして仲良く……、なのかどうかはわからないけど、ハルヴァヤさんは楽しそうだし、マシロ姉さんも嫌がってはいない。 出会ってから二ヶ月くらいはホノカさんが「ハルの爆笑なんて私、見たことなかったわ」などと言いつつ嫉妬を込めた視線をマシロ姉さんに送っていたりもしたし、本当の友達って案外、こういうものじゃないかと思う。 私はマシロ姉さんのことを(恐ろしい部分を含む)少しは知ってるつもりだから、そんな人を平気で笑えるハルヴァヤさんはきっと、運命的で理想的な相手だ。 私達が鉄子さんに何とかしてもらわなかったとしても、最終的に二人は今の形に落ち着いていたことだろう(私達の生死は別として)。 「なんですかエル殿まで顔をにやけさせて。そんなに私の顔が滑稽だと?」 「いえいえいえいえ! 違いますって!」 いつか行ったコタマ姉さん復活記念バトルでマシロ姉さんと戦ったことはあったが、その時はあくまで余興であって、日を改めて本気の本気、マシロ姉さんが十二の騎士を完全に使い、遊び手加減一切無しの真剣勝負をお願いしたことがあった。 四秒だった。 速さが自慢の私がまさか距離を取ることすら許されず、あまりの実力差というか理不尽さでわけが分からず――じゃあ後はもう号泣するしかなかった。 つまり私がマシロ姉さんと喧嘩を始めた場合、その時点から私の寿命は残り四秒ということになる。 「そっち移るから場所開けるにゃスピード自慢。オマエに島風コスプレは似合わんにゃあ。アルトレーネに似合うのは……、ビスマルクか飛行場姫にゃね。なのです繋がりで電でもネタ的に悪くにゃい」 「艦これって面白いの?」 私とメルの間にわざわざ割り込んできたカグラのタブを、メルは大して興味もなさそうに覗きこんだ。 「エル姉に似合うのってどれ?」 「ビスマルク持ってたらワガハイは苦労せんにゃ。大和すら出ないからオリョール海でクルージングとかやらんといかんのにゃ。あ、言っとくけどワガハイの秘書艦は夕立改二だからにゃ。球磨型もみんな好きにゃが多摩じゃあないにゃ」 「ちょっとやらせてよ」 「聞いとらんにゃオマエ。じゃあワガハイが休憩してる間にデイリーこなしとくにゃ。潜水艦を出撃させるだけの簡単なお仕事にゃ。まずは――」 「ふう……、落ち着いた。申し訳ないホノカ、マシロ。話を遮ってしまったな、続けてくれ」 「何故私を侮辱したかの説明は無しですか。神様も口を押さえていたようですが?」 「神姫が生まれる2036年よりずっと昔の有名な話さ。映画『猿の惑星』の円盤パッケージを飾ったのが自由の女神像でね。ほら何となく想像できるだろう、タイトルが猿の惑星なのに、どうして自由の女神像が関係しているのか」 「――――つまりパッケージでネタバレしている、ということですか」 「それもラストのインパクトを生むためだけに作られたような類の映画だったこともあってね。そりゃあ当時の人間に味わい深いインパクトを与えたものさ」 「犯人はヤス、みたいなものですか。ネタバレブームでもあったのでしょうか。ところでホノカ殿、その猿の惑星がどうかしましたか」 「もう猿の惑星からどう話そうとしてたか忘れたわよ……、人がせっかく真面目な話しようとしてたのに、どっから出てきたのよハサミギロチンって」 自分で言ったくせに。 トゲトゲしく言いつつ、またヂェリ缶に手を伸ばすホノカさん。 ヤケ酒ならぬヤケニトロ、というわけでもないのだろうが、空き缶がどんどん増えていく。 「じゃあストレートに聞くけど、私らっていつ死ねばいいの?」 飛び跳ねそうな勢いでハナコ姉さんが震えて、炬燵の中に潜ってしまった。 ◆――――◆ 何度かそれらしい雑談はしてきたけれど、こうも直球で話題になるのは初めてのことだった。 「昨日ゴクラクが自殺したのよ。エルとほむほむは知ってったっけ? 『清水研究室』の室長。ディアドラ型の神姫」 「俺の名はホムラだ」 私はほむほむ姉さんのように平然としてはいられない。 口を開いたら何を言ってしまうか分からなかった。 「潜水艦だけじゃ面白くないし……、よし、なんかストラーフに似てる空母大鳳、出撃!」 呑気な妹が羨ましい。 「そんな顔で私見ないでよエル。言いたいことは分かるわよ、どうして知り合いが自殺したのに、こんなに平然と喋ってんのかってことでしょ。私にもね、ちょっと関係あったのよ。この有難い神様の……、あれ?」 ホノカさんが握りこぶしを作って振りかぶろうとした先、さっきまで座っていた神様が忽然と姿を消していた。 私だけでなくマシロ姉さん、ハルヴァヤさんすらも気付かなかったらしく、炬燵の中を覗いてもコタマ姉さんとカグラ、それに耳を塞いで縮こまっているハナコ姉さんしかいなかった。 この炬燵は大きくても茶室まで広いわけではない。 畳の下か天井の上を除けば隠れる場所なんてない。 「まぁ、クソ神様が仕組んだこととは別問題だとは思うけどね。一週間くらい前にゴクラクがわざわざ私のところに来て、こんなことを言ったのよ。「セイブドマイスター殿は我を消失しても痛みを覚えることはない。覚えておいてくれ」だって。その時は何言ってんだコイツって感じだったけど、実際そうだったって昨日、分かった」 「聞いていないぞホノカ」 「言わなかったのよ。ゴクラクの遺言というか、あいつが見つけたものが本物か確かめたかったの。『デウス・エクス・マキナ』でハルと一緒に括られてるマシロも、平然としてるけど実は疼くものがあるんじゃない?」 「……貴様の五月蝿い口を上半身ごと消したいところではありますね」 「その疼きの正体をゴクラクは掴んだらしいのよ。『清水研究室』は元々、そういった私達が普通掴めないものを掴むために立ち上げられた機関だった。ゴクラクはこんな話も残していったわ」 ◆――――◆ 三人の神姫オーナーがいてね、所謂三角関係だったのよ。 男性のAくんと女性のBさんは恋愛関係にあって、女性のCさんはAくんのことが好きでもあり、恋敵のBさんの親友でもあった。 Cさんは悩んだ末にラブレターを書いて渡そうとした。 でもAくんに渡す勇気がなくて、じれったく思っていたCさんの神姫はある日、自分がラブレターを渡してきてやる、と言った。 Cさんの神姫はAくんの神姫にラブレターを渡して、Aくんにしっかり読ませるように頼んだ。 ここが最悪の間違いだったのよね。 この日の夜、CさんはAくんのメールを受け取った。 自分にはBさんがいるけれど、それを知っているはずのCさんに告白されて戸惑っている。 Bさんには内緒で、まずはチャットのやり取りをしてみないか。 で、翌日からCさんはAくんと夜、おしゃべりをするようになった。 三人が顔を合わせる昼間はAくんとBさんの仲を絶対に崩さず、でもCさんは夜になればAくんと好きなだけ話すことができるようになって、思い詰めることはなくなった。 ◆――――◆ 「あぁ、大鳳が轟沈しちゃった。大丈夫なのかな」 ◆――――◆ そんな昼夜で区切られた歪な二股が……、まぁ歪じゃない二股があるのかって話だけど、長く続くはずがなかった。 Cさんの神姫は、Cさんが喜んでいるならそれでいいって考えてたけど、間抜けよね、おかしいことに気付くのに数日もかかったのよ。 Bさんという彼女がいながら、どうしてAくんは毎晩、Bさんのための時間を作れるのか? Cさんの神姫はAくんに問い詰めたけれど、チャットどころかラブレターのことすら知らなかった。 つまりCさんのラブレターはAくんの神姫に止められていて、Cさんのチャット相手もAくんの神姫だった。 坂を転がる石のように、ってな感じで、間が悪くこの話をCさんは聞いちゃった。 Cさんに負けず劣らず、Cさんの神姫もパニックに陥ったわ。 Aくんの神姫にケジメをつけさせるはずだったけど、それよりCさんが強い人間じゃないって誰よりも知ってるんだもの。 慌てて追いかけたけどすぐには見つからなくて、一度家に戻るとCさんはチャットのログを食い入るように見てたの。 「これ全部、背比やないん? ねぇコタマ、嘘やろ?」 そんなこと言われたってCさんの神姫――竹櫛さんのコタマが返事できるはずもなくて、とにかく落ち着かせるために布団に入れた。 コタマはずっと監視するつもりだったけれど、竹櫛さんの寝息が聞こえたら自分にも疲れがのしかかってきて、クレイドルに横になった。 ちょっとだけ、のつもりで。 でもコタマだって普通の神姫だし人間みたいに根性で疲労を我慢するなんてできないから、仮眠じゃなく深い眠りについてしまった。 で、コタマは数時間後に飛び起きたけれど、もう手遅れだった。 竹櫛さんはコタマの目の前で首を吊っていた。 ◆――――◆ 「つまんねー話だなぁオイ」 炬燵の下からコタマ姉さんが、マシロ姉さんの横にもぞもぞ出てきた。 ホノカさんのトンデモ話を聞いていたらしく、でも鉄子さんが自殺するなんて話を聞いて怒らないなんて、コタマ姉さんの反応じゃない。 マシロ姉さんだってそうだ。 私の知るマシロ姉さんなら今の話はこの茶室を戦場にするに十二分の理由になるのに。 「ゴクラクって奴の言いたい事がアタシにも分かってきたぜ。ホノカ、その話はここからやっと本題に入るんだろ?」 「さすが当事者。もしかして続きも分かる? というか知ってる?」 「本題っつっても残件処理みたいなもんだけどな。まずエルを殺す。まぁ当然だ」 「当然のように私を殺さないで下さい」 「ラブレターを届けず鉄子ちゃんを騙し続けたAくんの神姫って誰だろうな?」 「…………」 「そしてアタシは【自分のAIを竹櫛鉄子に書き換える】。エルがいなくなった場所に鉄子ちゃんとしてのアタシが入って、背比弧域と竹櫛鉄子を永遠の仲にする。事情を知っている弧域はこれを拒否できない。こうしてアタシは鉄子ちゃんの願いを叶え、復讐を遂げることもできましたとさ。めでたしめでたし、だろ?」 「めでたしめでたしかどうかはさておき、その通りよ」 「待て。話にまったくついて行けないぞ。俺にも分かるように説明してくれ」 ほむほむ姉さんだけじゃなく、表情を見る限りハルヴァヤさんも蚊帳の外だった。 「今の話は実在するストーリーをなぞったものか? 先の自殺した神姫というのも、貴様らの反応もまるで理解できない」 「結論から言うと私達、武装神姫のAIは人間でいうところの感情とか性格とか、そんなものとは程遠いって話よ。残念って言い方も今となってはだけど、私達に心は無い。技術的には可能だけど、いざ作ってみたらさっきのコタマみたいな狂った神姫が生まれてしまった」 「おい本人を前にして狂ったとか言うなや」 「ゴクラクが本当に知りたかったのは【神姫のあるべき寿命】だったそうよ。でも武装神姫コンテンツそのものが終わっちゃったし、心も存在しないとなれば人間様の都合を考える必要もない。機械が勝手に故障するようなものよね。逆に人間から見ると心の無い神姫に対する生み出した責任も、権利を保護する義務もない。今メルがやってる艦これの艦娘と同じよ。大鳳を沈めてしまっても――」 「赤城も沈んじゃった」 「……赤城が沈んでもプレイヤーは悲しむだけだし、いつか艦これそのものが終われば艦娘も消える。形として残る私達が幸か不幸かは分からないけれど、残るのであれば余計な騒ぎを起こすなよってことで、極端な行動に走らないようになっている。【感情のような信号】なんて不気味の谷を回避するための役割程度しかなくて、さっきの話の【自分のAIを竹櫛鉄子に書き換える】コタマのような制御不能の暴走機械は生まれない。旬が過ぎたオモチャがどうなるかは持ち主次第ね。今のチマチマしたサポートもそのうち終わるだろうし、サードパーティだって手を引くか超高値で取引を続けるかのどちらかしかない。これは今の神姫とオーナーにとって当然の事だけど、神姫に心がないとまで分かるとオーナーはどうすると思う? それとも私達神姫はずっとオーナーを騙し続けてお人形さんであり続ける?」 「その必要はにゃい」 突然、炬燵の中から再び私とメルの間に出てきたカグラは、メルからタブを取り上げて操作し確認し、暫くプルプル震えた後、メルに跳びかかりスリーパーホールドを決めた。 「ぐえっ!?」 「そのゴクラクとかいう神姫はいい線行ってるにゃ。いや逝ってるにゃ? でもツメが甘いっつーか、重大な見落としがあるにゃあ」 「メルに何すんですか!」 カグラの腕を引き剥がそうとするがビクともしない。 どっから湧いてくるんだこの腕力。 「心が無いのは正解にゃ。AI書き換え朝飯前のワガハイが太鼓判を押してやるにゃ。でもソイツも人間も次元論で検証したんにゃろ? にゃらその結果も次元論で楽々覆せるにゃ。忘れたにゃ? 武装神姫は第三次世界大戦の可能性を否定したレアリティの高い世界の存在にゃ。そんな世界、ワガハイならぶっちゃけ次元戦争を持ち込んで征服するのも楽勝にゃ。今ワガハイがそれを実行しないのは……、武装神姫が終わっても、艦これだけは絶対に終わらせんからにゃー!!」 「く、苦し……」 「なにしてくれとんにゃオマエ! ワガハイが大鳳にどんだけ資材つぎ込んだ思っとるんにゃー! つーか赤城轟沈とかバカにゃろマジで! 体で償うにゃ! オマエの素体から資材回収して那珂ちゃん建造して解体してやるにゃー!」 「やめて本当にメルが! アマティ姉さんも止めてください! さっきから寝てる振りしてるの分かってんですからね!」 「…………」 「クソ猫あんた、私達の心と艦これのどっちが大切か――」 「あぁん!? ワガハイの艦娘より大切なものがこの世にあるっつーのかにゃあ!?」 「じゃあ他人にプレイさせるなよ。楽して資材回収しようとしたお前が悪い」 「やかましゃー! オマエタチがにゃんと言おうがこのアルトアイネスが那珂ちゃんになることは確定事項にゃ! 四八の次元からコイツを集めてNKC48結成解散解体処分にゃ!」 「私の妹が死ぬ! ちょっと皆さんホント助けて! なんかカグラが本気! すごい本気!」 「いやまぁ、さすがに大鳳と赤城を沈められるのはちょっと……」 気不味そうに頷く一同。 コタマ姉さんとホノカさんはともかく、ほむほむ、マシロ姉さん、ハルヴァヤさんまで。 ブームって恐ろしい。 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2514.html
不良娘と放課後のディスカッション 世の中はオセロのような物だ。 片やが立てば片やは減り続ける、そうして四隅を取られて敗北を待つ。 コマを回収するときを静かに待ち続けるしかないんだ。 負けてたまるか、諦めてたまるか そう思い続けた日々は無意味と帰して… 「そうして哀れ私はこうして肉体労働に準じるしかないのね…よよよ」 「おい神奈、余計な口を動かしとランでこっちの資料もいらないから縛って置いてくれ あとそれからそこの教材と此処の参考書ももういらないから棄てるように。それから…」 「は~いはいはい、私の手は何本に見えます?二本ですよ!」 少女は無意味なモノローグを途中で切られた事にムッとして、半ば剥げた教員に文句を返す。 少女は特徴的なウェーブのかかった長髪をしており 流行りの小ぶりなバイオメタルフレームの眼鏡をかけていて それが逆にスタイリッシュなファッションとなっている…所謂美少女である。 しかしその手には軍手、そして首にはタオルをかけておりやや埃にまみれたその姿はアシンメトリーな違和感を感じさせた。 「今これゴミに出すんでもうちょっと待ってくださいよっと…急かす男性は幾つになってもモテませんよん♪」 余計な御世話だ!!という怒号を背に聞き終える前に扉を脚で閉める。 そして重い荷物を両手に木造の渡り廊下を歩く。 珍しい?確かにこんなご時世だ、そう感じるのも無理は無いだろう。 戸叶第三高校…通称戸叶三校。 都内におけるごく有り触れた3流高校であり、未だ木造の校舎が残っていると言う奇特な学校である。 なんでも21世紀初頭にごく一部で古き良き建築方式を残そうという運動があったらしく 当時の新技術であった圧縮技術によってできた強化木材によって最新のバイオセラミックに勝らずとも劣らない強度と頑丈さを兼ね備えているのだとか。 しかし所詮木材は木材、腐食菌達の30年間にわたる努力の甲斐あって、強固な木材もやがては腐食する運命を辿る事の証明に細菌どもは成功したのである。 それがどうしたと言われるだろうが此処からが問題で、雨が降ったりすると雨漏りが結構酷いのだ。 そして彼女、神奈 流の回収したテスト用紙に丁度狙い澄ましたかのように雨漏りが降り注いで来た事によって素敵なまでに答えが消えてしまったのだ。 通常は、ここで再試験の申し揉みを出せば先生はもれなくOKサインを出すだろう。 しかし彼女の場合は勝手が違った、授業の抜け出しに授業中の居眠りなど常習犯 果ては成績の良さとそれに寄り学校の平均偏差値をあげているのも彼女なのだからか堂々とそれらを行うのだから教員としては腹立たしい問題児の中の問題児 それが神奈 流の教員たちによる評価である。 つまり再試験していい代わりに、雑用だけでもやってもらうぞと言う事だ。 ちなみに再試験は既に終了しており教師も真っ青になる程の好成績を叩きだしている。 「しっかし何でまたゴミ捨てかしらねぇ~、こんなの男子にでもやらせりゃいいのに… まったく、私みたいにガッツのある野郎はいないのか嘆かわしい」 実際昨今のスポーツ事情から言っても、社会の中での男性の立場の崩落は未だ大きい物である。 何故ならば男子の運動離れと、筋肉や中身を磨くより外観を磨こうという努力にばかり目が行く者や 20世紀末から繁殖を始めたゲームやパソコンオタクと言った分化系の大量発生―といっても著者や神奈自身はそれを否定する事は無いが― パッと見ではそうそう問題ではないが、男子の体育離れ…即ちなよなよしい男子を大量生産するようなご時世と言う事だ。 しかし…そんなこのご時世でも奇特な人間と言うのは居るもので 「よう、手伝おうか?」 通りかかった部室の前に腰かけた男が神奈に話しかける。 ツンツン頭で如何にも前世紀では漫画の主人公のような頭をしている男はただ神奈を見かけただけなのだろう、それがどんな状態に有るかも知る由もない 彼がそんなお人よしである上に外見に見合わずそれなりに筋肉のついている男だと言う事も神奈は知っていた。 なぜなら彼は神奈が所属する部の部長だからである。 「頼むわ、ちょっと数学のあのハゲの準備室で教材とか色々あるからねん♡」 「え”…わ、わかった。男に二言はねぇ!!」 一瞬固まった、それ程に数学教師の階戸教員はなかなかに面倒くさい人間と言う事が知れ渡っているからだ。 しかし男はガッツポーズをとってその場から数学準備室へと足を運ぼうとする。 それこそがなんでも気合と根性とごり押しで物事を解決する男、元サッカー部主将にして武装神姫部部長の蘆田 阿頼耶である。 明らかに生まれる時代を間違えているこの男。 ふと神奈は蘆田を呼びとめた、もちろん頼んだ事を中止する気は無い。聴きたい事があったからだ。 「蘆田部長ー、部長の神姫はどったの~?」 「んん?今丁度部室内の掃除中だ、丁度部屋から追い出されちまった所だよ」 神姫…それは2041年現在、あまりにも当たり前に人々の日常に溶け込んだ汎用人型フィギュアサイズロボットである。 身長15センチ程度のボディにCSCシステムに寄る人工的な感情と魂をほぼ完全に再現した最新の人工知能を搭載 またボディに汎用的なパーツを搭載する事でほぼ無限とも言える多機能性を見せる―これを武装とも言い、後述の名の由来にもなっている― まさに、人類が生み出した理想的なパートナーと言えるだろう。 そして一部の人々はその神姫に思い思いの文字通り武装―武器や鎧、あるいは技術をありったけ積み込んだ超小型軽量化バトルモービルもしくは同左パワードスーツ等々前述の通り種類は無限である― を装備させ、あるものは自らが司令塔となって、或いは神姫と一つになって、小さなサイズの戦いを繰り広げる遊びが流行していた。 それを神姫バトル、そして主人と共にその戦いに身を投じる神姫達を人々は武装神姫と呼んだ。 「しかし…当たり前に浸透してるって言う割にはバカ高いのよねぇ」 「仕方ないさ、俺だってバイトの退職金と兄貴の残した神姫ポイントがなけりゃ二体も買えなかったしな」 流石元運動部員と言うか、もう神奈に追いついてきた蘆田と学校外の歩道を、荷物運びをしながら受け答えする。 ため息をついてゴミ捨て場へとたどり着く。古い学校だから景観を壊したくないという理由でゴミ回収場所も後者から結構遠い道の端なのだ。 「あぁもう、今日は私だってバイトの予定もキャンセルしたのよ!!なんだってこんな金にもならないボランティアをする為に…くっそう、21世紀初頭の活動団体を呪いたいいぃ!!」 「一体何を言ってんだお前は…」 ため息をつきながら蘆田は神奈に振り向く。 「そういえば、神奈はそろそろ神姫買う予定なのか?」 「いや全然?」 蘆田は意外な事にすっぱりと切り捨てられる問いに顔をしかめる。 それもその筈、神奈は神姫に対する知識が非常に深い。 本人は詳しい武装紳士・淑女で無くとも神姫ヲタならだれでも知っている事というが 実際戸叶三高神姫部の神姫達の武装は殆ど神奈がチューンナップしているのだ。 深いなんてものじゃない、明らかに何か経験を積んだのだろう。 しかし、その辺の事は蘆田は深く聞き出すつもりは無い、お互い過去は無意味なことと知っているからだ。 「まぁ部長だってサッカー部全員が女にうつつを抜かしててる中、極度の初心なもんだから凄く居づらくなったんで、せめて女性恐怖症を治すために神姫始めたんでしょ♪」 「ぐ!!それは今関係ないだろうが!!」 まぁ彼の過去の場合、もう殆ど払しょくできているから伏線にする必要もないのだが… やがてようやくゴミ捨て場へとたどり着いた二人はどさどさとゴミを置く。 「しかし何でだ、普段からお前うちの神姫達ともよく関わってるし神姫が嫌いな訳でもないんだろう?それこそうちの部費で買ったっていいんだ、金の事なんてそんなに気にする事でもないだろう?」 「…整理がつかないのよね、気持ちの問題と言うかね…なかなかどうして、私に共感できる子が欲しくてね」 そりゃ無理だ、と蘆田は正直にため息をついた。 神奈程の変人は中々居ない、神奈と関わった者ならだれでもそう思うし神奈本人もそう思うだろう。 しかし…ふと神奈は其処に捨ててあった赤い光を偶然視界に入れた。 「…………あぁ、前言撤回するわ」 「・・・は?」 神奈の突然の意趣返しに蘆田は戸惑いの声を上げる。 すると神奈は粗大ごみの中から伸びる『手』を握って、ずるりと引き上げた。 千切れたコードが絡まり、埃で汚れ、力無く手脚をぶら提げた身長15センチ程度の少女が神奈の掌に乗せられた。 「部長、ちょっと部室のクレイドルとパソコン借りるわよ」 「お、おい?」 「私はこの子の思い出を育ててみたいのよ♪」 トップ 続き
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1357.html
貴女はまるで、童話の中の御姫様。 伏せられた瞳に動かない唇。 そんな貴女を見ながら、まだ起きない貴女を思い描く。 貴女は、花の様に笑い、風のように走るのかしら。 貴女は、月の様に佇み、影のように寄り添うのかしら。 貴女は、海の様に優しく、山のように大らかなのかしら。 貴女は、優しく微笑む天使かしら。 貴女は、意地悪く笑う悪魔かしら。 朝は私を起こしてくれるのかしら、それとも私が起こすのかしら。 ご飯を一緒に食べられるかしら、一緒に洗いものも出来るかしら。 私と一緒にお出かけ出来るかしら、一緒に買いも出来るかしら。 貴女は、こんな私を笑うかしら? まだ見ぬ貴女、まだ出会えぬ貴女。 そんな貴女を思い描く私を、笑うかしら。 馬鹿な主だと、愚かな主だと笑うかしら。 でも、良いわ。 貴女と笑って暮らせるのなら。 「お初にお目にかかる。私の識別名はエウクランテ。貴女が私の主であろうか?」 部屋の真ん中に置かれたテーブルの上で、彼女は言った。 一人用のテーブルの上でもなお、その小ささが目立つ彼女は当然人では無い。 武装神姫。 人類の科学の結晶、慎重15cmにして人と同じ外見と、人と同じ心持った機械仕掛けの御姫様。 「そうよ、私が貴女の主? になるの」 絨毯に直に腰を下した私と、彼女の目線にはやはり差がある。 テーブルの分を差し引いても、まだまだ彼女の方が低い。 「それでは主、僭越ながら主の名を聞かせて頂けるだろうか?」 貴女は至極冷静に振舞っているけれど、時折視線が部屋中に飛ぶのを私は見逃さない。 本棚、机、ぬいぐるみ。 どれもが初めて見るものばかりなのだろう。 それを考え、これからを考えると自然と笑みが浮かんでくる。 「私の名前は加奈美。戸坂加奈美よ」 私の笑みに釣られたのか、貴女もようやく笑ってくれた、 とても機械とは思えない。自然で和やかな微笑。 「加奈美……か。とても良い名だ、主。それでは私にも名を与えてはくれないだろうか?」 小首を傾げる動作も、とても機械には見えない。 その全てが新鮮で、愛おしくて、私は不思議な気持ちで貴女の為に考えた、貴女だけの名を呼ぶ。 「……シルフィ、それが貴女の名前よ」 それを聞いた瞬間の貴女の顔は、本当に嬉しそうで、幸せそうで。 私も釣られて嬉しくなるような、素敵な笑顔。 「素晴らしき名だ、主。感謝する」 これから始まる貴女と私の生活。 大きな事件も、胸躍る冒険もいらない。 ただ流れる毎日に、身を委ねて楽しみたい。 「これからよろしくね、シルフィ」 「こちらこそ、主」 先頭へ 次へ -
https://w.atwiki.jp/tokilaby/
お知らせ 雑談・相談 攻略情報 外部リンク █トキノラビリンスについて 現代文明を遥かにしのぐ錬金術を誇った、伝説の王国“ミストリア”の謎を追う物語。 さまざまな属性を持つモンスターたちを編成し、霧に隠れた強力な敵に立ち向かおう! 発売日 5月未定 ジャンル 探索型RPG 提供・運営 セガネットワークスAppBankGames 対応機種 iPhone(2014.6.27~) Android(2014初夏予定) 価格基本 プレイ無料 公式サイト http //tokilabi.appbankgames.net/ このwikiはセガネットワークス、AppBankGamesが提供する「トキノラビリンス」の非公式wikiです。 █お知らせ イベント一覧 精霊王フェス 実施期間: 2014年6月27日(金)~2014年7月6日(日)23 59 内容: “プレミアムガチャ”に、ミストリアの精霊王たちが出現! メンテナンス&アップデート情報 6/27(金)22:00に メンテナンスを終了いたしました。 詳しくは、こちらから █コミュニティ ▶コメントを書き込む前に コメント欄での【煽り、叩き、晒し、荒らし】を禁止します。 当wikiおよびwiki管理人は運営様とは一切関係がありません。ゲームに関する苦情等はwiki管理人に送られても対応できません。 フレンド交換は、フレンド交換ページをご利用ください。 質問する前によくある質問をよく読んで同じ質問がないか確認してください。 wikiに掲載されている内容が【最新とは限りません】。気づいた点があれば、編集するか、コメント欄に情報をお願いします。 名前 http //ime.nu/pre.sega-net.jp/invite/inputcode?cid=tokilabi_invite code=f1b5fd6f 石2つ貰えるよ - あかさたな 2014-07-01 11 18 52 f1b5fd6f 石2つ貰えるよ - ディアボロ 2014-07-01 11 17 40 当サイトのwiki編集者募集中 - 名無しさん 2014-06-04 01 33 45 ページ上部の右上「このウィキに参加する」を選んでください。 - 管理者 2014-06-05 01 36 41 █関連リンク・外部リンク トキノラビリンス速報 ※当wikiは非公式の攻略wikiです。情報の妥当性や正確性について保証するものではなく、一切の責任を負いかねます。 ※当wikiを利用することによって生じるいかなる損害も当サイトでは補償致しません。 ※ご利用につきましては自己責任となりますのでご注意ください。 ※また、当wikiおよびwiki管理人はトキノラビリンス運営様とは一切関係がありません。wiki管理人にエラーなどについて問い合わせないようお願いします。 ゲームに関する問い合わせに関してはこちらから ※文章の著作権は当wikiにあります。内容の複写、転載を禁じます。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/563.html
武装神姫のリン 番外編その3「小さな幸せ」 リン…それは私の名前。 武装神姫第1弾、MMS TYPE-DEVIL「STRARF」のシリアルナンバー3600054468である私の名前。 マスターは私にこの名前を貰いました。 でも私、マスター、茉莉との問題を乗り越えてから2ヶ月ほど経ったある日、私はどうして「リン」という名前に決めたのか、ふとその理由が気になってしまいました。 そうして一週間が過ぎようとした頃、私は我慢できずにマスターにその理由を聞きました。 今回はそのときのお話しです。 それは用事で茉莉が実家に帰っていて、ティアもそれについていてしまい久々に2人きりになれた日のことでした。 「マスター…あの。」 マスターはいつものように顔を横に向けてくれました。 「どうした? なんか欲しいモノでも見つけたのか?」 「いえ…そうじゃなくて、聞きたいことがあるんですがいいですか?」 「ああ、いいよ。」 「じゃあ、なぜ私の名前はリンなんですか?」 「ああ、それか…」 マスターの顔がいつもと違って少し不安そうな、なんとなく力が抜けたような表情に変化しました。 「あの…マスター? お気に触ったんだったらすみません、でも…」 「じゃあ今からその名前に関連する、ある所に行くけど何も言うなよ。」 私はその言葉の意味を理解できず、ただただ 「はい。」 そう応えるしかありませんでした。 私の答えを聞いたマスターはすぐに進行方向を変え、駅へ。 そうしてJRと私鉄をいくつか乗り継いで郊外の町に着きました。 「ここにくるのは、久しぶりだな。」 やはりマスターの表情はいつものような元気がありません。 「あの…」 「何も言わない約束だろ。」 マスターの声がいつも以上に優しく感じられたので私は 「はい…」 口をつむぐまえにそう呟くことしかできませんでした。 そのままマスターは駅からの一本道をひたすらに進みます。 その日はまだ初夏だというのに日差しは強く、空が晴れていたことを覚えています。 焼き付けるような日差しの中を、マスターは途中で買ったミネラルウォーターを手に持ったまま歩いていきました。 そして着いたのは、お寺。の裏手にある墓地でした。 藤堂家の方々が代々眠る場所。そこにマスターは私を連れてきたのです。 私はその時点で大体の事情は把握できていましたが、マスターが口を開くまで待ちました。 マスターはミネラルウォーターを墓石にかけて、残った分はお供えを置くと思われる場所に置かれた湯のみに注ぎました。 そして私を手に乗せて、そこに眠るマスターの"家族"の名前が刻まれた石版の目の前に手をもって行きます。 それを見たとき、私は確信しました。 「リンていうのは。俺の妹になるはずだった子の名前なんだ。」 それと同時にマスターは私の問いへの"答え"を口にしていました。 それからマスターは全て話してくれました。 リンという名前はマスターと4つ違いの、今頃は茉莉とほぼ同じ年齢になっているはずだった妹に与えられるはずの名前だったのです。 それは今から17年前。マスターがまだ7歳のころ。 お母様(いまはそう呼ばせていただいています)は至って健康で、2回目ということもあり出産には何の問題も無いだろう、そう主治医の先生もおっしゃっていたそうです。 しかし予定日の2週間前、事件は起こったのです。 それはマスターとお父様(お父様はなかなか私がこう呼ぶことを許してくれませんでしたが今は大丈夫です。)が面会を終えて帰宅した直後でした。 突然お母様が出血したのです、原因は不明。 しかしそのタイミングは夜勤の引継ぎ時間帯であり、ナースセンターに人があまりいない状態。 しかも就寝の確認で夜勤の看護士の内の大半が各々担当の部屋を回っているとき。しかもお母様の部屋は巡回の最後の部屋。 お母様は必死にナースコールのボタンを探しましたが、不幸にもボタンがベッドの裏側まで落ちていて拾うことが出来ません、痛みをこらえることはできてもそこまで手を伸ばすことがお母様には出来ませんでした。 お母さんは必死に助けを求め、叫びました。 そうして巡回の看護士1人がそれを聞きつけるまでに20分の時を要しました。 お母様は緊急処置室にうつされ、処置が行われました。 マスターとお父様が知らせを聞きつけ病院にたどり着いたのがそれから30分後。 お母様は命に別状はありませんでしたが…おなかの子はすでに亡くなっていました。死産だったのです。 事前に女の子と判っていたので、お父様やマスターは意気揚々とその子の名前を考えていた矢先の出来事でした。 「今思うと茉莉が入院しているときに何度も何度も会いに行ったのは、そのときに亡くした"妹"を再び失うのはイヤだという気持ちが実はあったのかも知れない。」 そうマスターは最後に付け加えました。 「リンって言うのは俺が考えた名前だ。母さんが結構キリっとした目だったから妹なら似てほしいとおもった。それで辞書に載ってた『凛々しい』ていう言葉から凛ってな。 オヤジに話したら好評でそれにしようなんて車の中で話していたときに電話が掛かってきたからな。今でも覚えてるよ。」 「すみません!!」 わたしは謝っていました。 「あの、私。マスターが名前をくれたのが起動してすぐだったので何か理由があるのかな?と思っただけなんです。それがこんなにも深い事情があったなんて。本当にすみません。」 それを聞いたマスターはポカンとした顔で。 「はは、ちょっと懐かしくなっただけだよ。もちろんあの時は悲しくてしょうがなかったし、神様がいるんなら出てこい!! ってぐらい怒ったりもした。 でも過ぎたことは仕方ないし。過去は変えられない。 俺は今は幸せだぞ~リンがいて、茉莉がいて、ティアまでいる。そして皆元気でいてくれてる。それがおれの幸せだ。」 「マスター……私、どんなことがあっても絶対マスターの元を離れません。たとえ離れても、必ず帰ります。」 「ああ、約束だぞ。」 「はい、約束です。」 そして"凛さんに挨拶をして"帰りました。 その夏は茉莉とティアを連れて久しぶりの墓参りにやってきて墓石を綺麗に掃除しました。 そしてマスターは私たちのことを報告したのです。 実際に手に触れることも、顔を見てあげることさえ出来なかった。でも確かに存在した…凛さんに。 その頃からです、マスターと絶対に離れたくないと思ったのは。 理由はもちろんマスターを悲しませたくないというのもありますが、私だけじゃなくてみんなが元気でいること。 それこそががマスターの、茉莉の、ティアの、そして私の小さいながらもかけがえの無い幸せだと気がついたからです。 だから私はこれからもマスターの側を離れないでしょう。それこそ一生。私の"命"が続く限り。 TOPへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2241.html
第十五話:生贄姫 俺と蒼貴、そして日暮に注目される彼女が近づいてくる。胸ポケットには大した傷もないヒルダが入っており、この様子だと あの後のバーグラーを彼女は難なく倒したくれたらしい。 「緑か。すまん。さっきは助かった」 「気にするな。私達の仲だろう?」 「か、勘違いされそうな事を言うんじゃねぇよ!」 「おや、真那の方がいいのか? 根暗は明るい子の方が好みという事か……」 「あのなぁ……」 再会して早々の問題発言に俺は頭を抱えた。真那といい、縁といいどうしてこうも女というのはからかうのが好きなのだろうか。付き合わされるこちらの身にもなっていただきたい。 「ふふふ……。まぁ、お前をからかうのは後で楽しむとして本題だ。あのバーグラー共から情報を吐かせたぞ」 「マジか?」 「ああ。それも面倒くさそうなのをな」 笑った後の本題に俺はすぐに先ほどの悩みを隅に追いやって、尋ねる。 「端的に言えば小遣い稼ぎさ。資金に困った研究者によるものだ」 「研究者って義肢のだな?」 「そうだ。お前も情報を集めていたという事か。となれば情報交換といかないか?」 「ああ。それが一番早い」 「その話、僕にも聞かせてくれないかい?」 「尊、彼は?」 「正義の味方らしい」 「は?」 話に割り込んでくる日暮を端的に紹介すると、あまりにも直球過ぎたのか冷静沈着な縁も唖然とした。『正義の味方』という言葉は彼女の中では化石並みに古い言葉の様だ。 その反応を見た日暮は俺と変わらぬ反応でやはり笑う。そういった反応にはなれているのだろうか。 「言葉の通りさ。力になれると思うんだけどいいかい?」 「僕は構いませんよ。個人ではきつい話ですしね」 「尊がいいなら、信用しましょう」 「OK。じゃ、ちょっと店裏まで付いてきてくれ。僕も同時進行で調査するからさ」 日暮に促された俺と縁は互いの情報を交換し、その情報から情報収集をしてくれた彼と共に話を整理を始めた。 事の起こりは義肢研究の行き詰まりと国からの資金援助の期限が迫り、ついには切れてしまった事にあった。 義肢研究に関しては何もそこだけが行っているわけではない。その研究には多くの研究者達が参加しており、こぞって成果を出し、援助を求めようとしている。 あの義肢研究者もまた、その一人だ。成果を上げて資金援助を得ていたのだという。しかし、俺の聞いた話の通り、研究は行き詰まってしまい、資金援助が打ち切られてしまったのだ。 当然、障害者施設の収入程度では義肢という規模の大きい分野の研究費など賄えるはずがない。 このままでは義肢研究者は資金不足によって、研究を進められなくなってしまう。 そこで彼が思いついたのはその研究の課程で得られたリミッター解放技術であった。 神姫の出力で人間の四肢という大きなものを動かす事は出来ないため、必然的により大きな出力を引き出さなくてはならない。故に初めは違法パーツ……神姫の規格から外れているパーツで組んでいたらしい。出力の方も神姫に直接操作する関係上、リミッターの外し方などを独自に研究、使用していた。 その研究を応用し、俺達が遭遇した神姫達が付けていたイリーガルマインドに似せたリミッター解放装置を開発して、さらに障害者用の盲導神姫もイリーガルとして改造し、裏でバーグラー達にそれらを横流ししていたらしい。 紅麗というリミッター解除装置を付けた神姫の所属しているバーグラー達から聞いた情報では裏サイトで仲介者から買い取ったと言っており、その裏サイトのアドレスを日暮が普通はしてはいけない様な方法で調べるとそこにはかなりの高額で取引されている事を証明するページがあった。 イリーガルマインドに似せたあの違法パーツが様々なバリエーションで用意されており、強力であればあるほど高額になっているラインナップだった。 そのレートは数千円である場合もあれば、数万円の場合もある。強弱や能力のばらつきがあれど、その力は使った神姫を死に至らしめる程強力なのは共通している。 さらにあろう事かバトルロンドのシステムに引っかからない様に調整された違法改造用のキットやイリーガル神姫までもを直接斡旋していた。 「己のために神姫を喰い潰すか……」 「人の性ってやつかもしれんな……」 緑の言う通り、人を助けるはずの義肢研究も少し道を外すだけで力に溺れさせる死の商人と成り果てるとは皮肉である。 自分の研究を続けるためというシンプルな考えであるはずなのに課程を間違えるだけでこれだけ堕ちてしまうとは人とは恐ろしいものである。 「何にしてもこいつはまずいな。このままだと、ここ周辺でイリーガルが大量発生しかねない」 日暮も危険を唱える。 イリーガルに成りきるだけではなく、それを作り出せるとあってはそれを知った人間はこぞってそれを買っていくだろう。密売を始めてまだ間もない感があるが、このままではバトルロンドがそうした違法神姫達が横行する事に成りかねない。 「自分らで何とかできる話ですかね?」 「その辺は心配ない。情報収集や操作でどうにでもなるからね。ただ……」 「ただ?」 「証拠がない。君たちの言う研究者に突きつけるための動かぬ証拠がね」 「このページやバーグラーの発言では足りないって事ですか」 「ああ。ページは誰か別の奴が作っているだろうし、バーグラー達は直接あの研究者から買い取ったってわけでもないだろうからね。せめてそれを見ている施設内部の神姫がいればいいんだけど……」 「でもそれは巻き添えでその施設が閉鎖される可能性があるのでは? そのために黙るとかあり得ると思うのですが……」 「確かにそう考えられるかもね。まぁ、その辺は可能な限り頑張ってみるよ。それより証拠のアテは何か知らないかな?」 それを聞いて俺は考える。あの施設の中で最も都合のいい立場にいる人間を頭の中から取捨選択して、残るのは……。 「輝と石火だな。だが……」 彼らならば顔が通っており、なおかつ石火の索敵によるカメラ映像情報を持っている可能性がある。 彼女の目はどんな些細なものも見逃さない千里眼にも等しき目だ。何かしらの情報を掴んでいるかもしれない。 とはいえ、そうであるかどうかには不安が残る。そもそも石火がそれを見ていないというのもあるが、彼らがグルである、或いは見てしまって口止めされているなど、障害になりえるシチュエーションはかなりある。 「それでもそいつに聞くしか手段は思いつかないのだろう?」 「……まぁな」 緑の言う通り、現状で有効な手はそれぐらいしかない。 石火が見ていた場合の情報の信頼性としては、石火の整備は施設では全く行われてはおらず、専属技師である親友がやっている可能性が非常に高いという事だ。これは施設による石火のデータ改竄されている可能性が極めて低い事を意味している。仮に不都合な情報があったとしてもそれが消えることはない。 また、施設の研究者も輝という名前が全国に知れ渡っている故に石火に、そのマスターの輝にも迂闊な事はできない。仮にそんな事をした場合、真っ先に疑われるのは彼らなのだから。 「なら、決まりのようだね。輝の事なら僕も耳にしているよ。彼は全国大会の最初のチャンピオンでその専属技師の友人も技術面では結構、有名だ。交渉は慎重にやった方がいい」 「わかってますよ。必要なら僕が憎まれ役を買いますし」 「随分と大胆な事を考えるね。だからこそやれるとも思えるけど」 「それが彼なんですよ」 「なんだそりゃ?」 「それは自分で考えろ。その方が面白い」 緑の突然の言葉に頭の中に疑問符が浮かんでくる。彼女に聞いてもあしらわれ、その謎を自分で考えてもあまりピンとはこない。 「考えてもわからん……」 そういう事に行き着いてしまう。 「まぁ、気長にな。で、そいつはどこにいるんだ?」 「神姫センターだ。行けばまた会えるだろう」 話題変わって輝の場所だが、俺はただ会っただけだ。輝から携帯電話番号を教えてもらったわけではなく、単に会って話し合っていたに過ぎない。 そこで連絡先でも聞いておけばと後悔もできたが、今更そうしても仕方の無い話だ。 「なら、そこで探すしかないな。とは言っても盲目自体珍しい。難しくはないだろう」 「ああ。後は引き込める上手い言葉を探しておくさ。根性論なんか押し付けたくねぇしな」 「それもそうだな。だが、彼らは正しいと思うから間違うかもしれんぞ?」 その通りだった。いくらそれが正しい事であったとしてもそれが納得できる事と同義であるわけではない。 自分のルールにそぐわないものは自分が変わらない限り、それは障害以外の何者でもないのである。 この事実を輝が受け入れるか、拒否するか、逃げるか、俺達にはわからない。確かなのは…… 「その時は……その時だ」 それだけだ。 「……そうか」 「ワリィ。それほど器用じゃないんでな」 「わかっているさ。その時になっても後悔はするなよ?」 「ああ」 「話は決まったかい?」 「ええ。僕が何とかします」 話が一区切り付いてきた所で声をかけてくる日暮にやる事を伝える。 可能な限り早い日に輝には俺が情報を持ちかけて説得をかけ、彼に協力を取り付け、石火の視覚データから違法神姫に関する証拠映像を手に入れて、それを証拠とするという事だ。 解決策に関してはイリーガルマインドを解析しているであろう杉原に話を聞き、それがわかり次第、その方面の行動も展開していく。 日暮との連携も考えて、杉原には彼の事を伝え、協力して事に当たってもらうものとする。上手くいけばあの義肢研究者を足がかりに彼に連なる違法ブローカーも芋づる式で捕まえられるだろう。 「わかった。僕は君が話をつける前に段取りを整えておくよ」 「それでは僕はこれで。紫貴もそろそろ直っている頃でしょうしね」 「あ。また、パーツに困ったら買い物にでも来てくれ」 「ええ。そうします」 自動ドアを出て、修理が終わったであろう紫貴を迎えに歩きだした後で、俺はため息をつく。 確かに計画としてはいい。だが、輝と石火がこの話をどう思うか、借りに信じたとして自分の世話になった場所を潰す事になるかもしれない事をどう思うか、全く予想が出来ない。 当然、心苦しい事になる。これからどうするかもわからなくなるだろう。だからといって俺が責任をとるために導いてやれるなんて馬鹿げた話は無理だ。そこまで自惚れる脳みそをしちゃいない。相手にこれからを委ねるが精一杯だ。 「カッコつけておいて、やる事は他人任せか……」 自嘲的にそれらをまとめる。交渉事なぞ所詮はそういうもののはずだがやはり煮え切らないものがある。 「オーナー……」 「わかってる。やるだけやってみせるさ。あっちが恨もうがな」 「自分だけで背負わないで下さい……。私や紫貴だって背負います。それに私達が悪い訳ではないはずです。いつまでもあのままならもっと傷つきますから……」 「そのはずだよな……」 引き金を引くのは俺だが、と続けようとしたがこれ以上は泥沼になるため、止めた。 蒼貴が元気付けようとしているのにそれを無碍にするのは悪い。 そんな陰欝な雰囲気で歩いているとコンビニを通り掛かった。そういえばあの戦いの前から何も飲んでいない。色々と起こりすぎて喉がカラカラなのを忘れていた。 そんな訳で俺はコンビニに飲み物を買いに入る。コンビニの中には店員と少数の客しかおらず、並ぶ事なく会計を済ませられそうだ。 詮無い事を考えながら、雑誌の並ぶ雑誌コーナーを進む。そこで週刊バトルロンドの最新刊が目に入った。どうやら丁度今日が発売日だったらしい。 俺は何気なくそれを手に取り、それを開く。 「こいつは……」 バトルロンド・ダイジェスト最新号の表紙には『特集:~ 絆 ~ 武装神姫はなんのために戦うのか?』というあまりにも規模の大きいタイトルと見た事のないタイプの神姫と『アーンヴァル・クイーン』の異名を持つランカー 雪華が写った写真で大きく飾られていた。 自他共に厳しく接し、高尚なる戦いを求める彼女の事は神姫センターで別のランカーを薙払っているのを俺も見て、知っている。そんな雪華が誰かに優しく、ましてや抱くなどという事をさせた泣いている神姫は一体何者なのだろうか。 俺は興味を持ち、雑誌を開く。表紙の内容は巻中のカラーページに特集として大々的に描かれていた。 最初はバトルの詳細な解説が主な内容だ。雪華はいつもの飛行装備、泣いている神姫……ティアというらしい神姫はランドスピナーというモーター駆動のローラーブレードと拳銃やナイフで戦っていたらしい。 ティアといえば元風俗神姫だったらしい事を噂で耳にしたことがあった。しょうもない奴が経歴を言いふらしてけなすだけのどうでもいい話だと思っていたが、まさかこうなるとはこれを見るまでは予想もしていなかった。 さらにそれを読み進めると信じられない事が書かれてあった。なんとティアは雪華最大の必殺技を回避し、その挙げ句彼女の武器を奪って戦ったらしい。 大した度胸と執念だ。ティアのオーナーとは会えればいい話ができそうな気がする。 戦いの末、ティアは倒れ、試合の形式的には敗北したらしいが、雪華は敗北を認めたという。 そんな試合があったとはそれを直に見られなかったのが非常に残念だ。面白い戦いはどうにも俺の外で行われているらしい。いつかセンターを飛んで回ってみたいものだ。 その戦いの記録の後は「武装神姫はなんのために戦うのか」というタイトル通りの問題提起になっていた。 雪華を初めとするランカー神姫が思い思いのコメントをその記事に刻んであり、 「人は武装神姫を戦わせる。それは名声のため、お金のため、バトルの楽しさであるかも知れない。 戦わせる理由はマスターによって様々だ。しかし、神姫にとって、戦う理由は皆同じだ。マスターの望みを叶えるために戦っている。 もう一度振り返ってみて欲しい。神姫は何を思い、なぜ戦うのか。 自分はなぜ、自分のパートナーを戦わせているのか、を」 それらがそう結ばれていた。その主となる言葉は「マスターのために」だ。その言葉を恥ずかしげもなく、彼女たちは言えている。 呆れるほど単純なその言葉には計り知れない想いが詰まっていることだろう。 その後の特集は、絆を思い起こさせる、過去の名勝負のダイジェストが紹介されていたが、必要なことを知った俺は雑誌を閉じ、それを持ってコーラと一緒に会計を済ませて、外を出た。 「人も神姫もそこまで弱くはない、か……」 ティアの話は、絆は自分達が思うよりずっと堅く、支えになる事を教えてくれた。 俺と蒼貴と紫貴だって、そういう絆があってここまで来たのはよくわかっているつもりだ。輝と石火の絆だってそうであるはずだ。……いや、時間が長い分、俺達よりも堅いはずだ。 「こういうのを潰しちまいたかぁねぇな……」 戦いの場をイリーガルから守るというご大層な名目を掲げる気は無い。ただ、こういう絆を感じさせる戦いが無くなるのは気に入らない。 武装神姫が何のために戦うのか。それは言うまでも無く、マスターのためである。これは雑誌の通りだし、大抵のマスターも理解しているだろう。 が、そのマスターが狂えば従っている神姫はどうなる。少なくともそれまでの関係には戻れなくなってしまう。それもまたつまらない話だ。 「あいつらの絆に賭けてみるか……。どんな結果になろうが……な」 別に主役を張る気は無い。が、見て見ぬ振りをするつもりもない。 俺はティアやそのオーナーの様に戦えないかもしれないが、自分の筋は通す。それぐらいはできてもいいはずだ。 「なぁ。蒼貴」 「はい」 「俺、イチオーナーとして頑張ってみるわ。付き合ってくれるか?」 「その言葉は紫貴と一緒にお聞かせください」 「……そうだったな。あいつを迎えに行こう」 「はい」 そう胸に決めると俺は蒼貴と共にカルロスの喫茶店に預けた紫貴を引き取りにコーラを飲みながら歩いていく。 やるだけ、やってみるか…… 戻る -進む